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H28.10.28 マレイ・ペライア ピアノリサイタル@浜離宮朝日ホール [ピアノ]

ペライアのリサイタル、浜離宮へ。2013年以来3年ぶりの演奏会。

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席が後ろの方で心配していましたが、このホールの広さであれば全く問題なく、これまで大きいホールで聞こえなかったような様々な音を聴くことができました。

滋味溢れるだけでなく、時には荒々しく、そして曲への愛情、一音一音へのこだわり、、、
それがあくまでも自然に音楽として流れている。また後半のベートーヴェンでは自分そのものを隠すところなくさらけ出し、音楽だけでなくペライアの人柄そのものを感じることのできた、そんな気がします。聴く方もそれを一音たりとも聞き逃したくない、そんな気持ちのせいかあっという間に終わってしまった演奏会でした。

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(プログラム)
ハイドン アンダンテと変奏曲 Op.83
モーツァルト ピアノソナタ K.310
ブラームス 6つの小品からバラード Op.118-3
4つの小品から間奏曲Op.119-3
4つの小品から間奏曲Op.119-2
6つの小品から間奏曲Op.118-2
幻想曲集から第1番Op.116-1
~休憩~
ベートーヴェン ピアノソナタ第29番 Op.106「ハンマークラヴィア」

全体感では、やはり音色に驚嘆。場面場面によって様々な顔を見せますが、共通して言えるのは澄みきった美しさ、磨き上げられたガラスの玉のような輝きをもちながら優しさに溢れており、ペライアの音への心配りが聴いている方にも伝わってきます。そして荒々しく弾いていても(今回かなりそういう場面がありました)、決して音は割れずピンと張りつめたような音を感じます。そしてふっと優しく美しい音へ切り替わる、、、何度もハッとさせられました。

そして、これも曲に関わらずですが、各声部が良く歌うだけでなく、その絡みがはっきりと聞こえ、見事に調和しているのを感じます。ハイドンやモーツァルトで左が単純に和音や分散和音で伴奏するところですら歌を感じる、、、驚きました。複雑なブラームスの後期の小品ではそれがさらに鮮やかに。息をするかのように自然にそういった弾き分けができており、ベートーヴェンの1楽章や終楽章などで荒々しく弾くようなところでも、それは崩れることはなく、曲の構成含めて鮮やかに目の前に浮かび上がらせてくれます。

また今回は、曲順の構成についても強く感じました。ハイドンのような音の少ないもので1音1音の美しさを楽しませ、モーツァルトで音、音色に厚みを増し、ブラームスで音量、色彩感が一気に加速する、、、聴いていてクラクラさせられます。
そしてブラームス後期小品のコラージュ。不思議な並び順ですが、Op.118-3を冒頭に持ってきたのは、モーツァルトでもそれなりに音が増え厚みを増したのを感じている中で、突然広がる音域、音の厚み、色彩を鮮やかに感じさせるためだったのか、そう感じました。Op.116-1、あの曲集の幕開けとなる曲を最後に持ってくるところに違和感を感じていましたが、演奏を聞いて納得。1曲目とは明らかに弾き方が違いました。あの激しさを最後に前半をまとめたかった、そして後半への序章、、、そんな意図があったのではないかと思います。
そして後半のベートーヴェン。高まったボルテージそのままに一気に曲へ入り込み、最後まで駆け抜けていきました。

さすがに今回は疲れたのかアンコールは無しでしたが、いつまでもこの世界に浸っていたい、そんな余韻を残して演奏会は終わりました。69歳にしてこの演奏、、、次も必ず聴きに行きたいと思います。

各曲の感想ですが、備忘で書き留めておきます。
ハイドン:主題の美しさ、右の旋律の歌い方、音の輝きが素晴らしい。各変奏での左右の歌のバランスと交わり方、おどろいた。
モーツァルト:短調でありながら、明るい響き。こんなに輝かしい響きの演奏は初めて。1楽章の左の伴奏が単なる分散和音の羅列ではなく、そこにも歌がある。音のボリューム、音楽の陰影がくっきりと聞こえる。モーツァルトでこういった響きがあるのかと驚嘆。また2楽章の滋味溢れる優しさ、、、素晴らしい。
ブラームス:後期小品のコラージュ。鮮やかな色彩を感じるようにあえてOp118-3を冒頭に持ってきたような気がする。中間部の各声部の絡み合いがくっきり。3人で歌っている。Op.119-3、2とも従前聴いたときよりも音の輝きがパワーアップしている。Op118-2はあくまで自然。澄み切った音、歌があくまでも自然に流れている。そしてOp116-1。なんでこの曲が最後なのか不思議だったが、並べて聴いているとその意図が良く分かる。弾き方もそれに合わせて1曲目で弾くのとは違う弾きかただったと思う。そして、後半への助走という意味合いもきっとあっただろう。
ベートーヴェン:スケール、音楽の奥行き、音色の輝き、すべてが素晴らしいのはもちろん、ペライアそのものがさらけ出され、こちらにぶつけてきている、そんな演奏。冒頭ものすごい勢いで突っ込んできておどろいたが、見事なバランスで最後まで一気にいった。3楽章があんなに充実した音楽だというのは今回初めて知った。もっともっとこの曲を知る必要がある。そしてフーガ。冒頭の旋律の音が強靭で充実、粒揃いも含めて背筋に寒気がした。一気に最後まで、、、素晴らしい。



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